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シンポジウム

 

 

ニュー・フロート・アイランド シンポジウム 開催趣意書
(New-Float-Island Symposium Prospectus)

副題:フローティング・シティーから人類の未来を展望する。

 私たちは、人類を含む多様な生命の活動基盤として、メガフロート(大規模浮体)を利用した人工大地の可能性を問うシンポジウムを開催します。

人工の浮島を生活の場とするアイデアは、人類の歴史の中で何度か夢見、語られてきました。小規模な水上生活は古くから行われていましたが、20 世紀に入ってから石油採掘基地や港湾施設として大型の浮体が実用化され、メガフロートが海上空港の工法としてしばしば検討されました。日本では1997 年から2002 年にかけて、1000m×60m~120m の巨大な浮体が作られ、航空機の発着実験も行われ、空港として利用する上での技術的確認もできました。今日では最新の造船技術と一体になって、浮体に関しては1000 年の耐久性も技術的な目標として議論できるようになりました。今後は巨大な人工物を地球環境の中にどのように位置づけるか、文化的、社会的構造をどう構築するか、と言ったことを課題にする段階に入っています。

今回のシンポジウムは、本年5 月に北海道トマムにて開催予定の第5 回太平洋・島サミット(日本・太平洋諸島フォーラム/略称PIF, の首脳会議:日本国外務省主催)の時期に合わせて、島サミット参加の大統領をお招きして開催したいと思います。太平洋の国々の中には、地球温暖化の進展によっては水没の危機に直面する国もあります。メガフロートは、これらの国々に海面上昇に脅かされない活動基盤を提供すると共に、島嶼国家の新たな発展と海洋文化展開の希望をもたらします。また一方で、これらの島嶼国家に培われてきた伝統や、これらの国々が直面し、克服してきた諸問題は、今後のメガフロート開発の課題となる社会的・文化的構造を考える上で、様々な示唆を与えます。このように、メガフロートの開発と太平洋の国々は、課題と可能性を共有し、補完しあう関係です。我々は第5 回太平洋・島サミットの機会をとらえて、これ等の国々に近い海域を想定した2つのプロジェクト(共にメガフロートと環境技術の融合を目指している。)を主要な題材として、シンポジウムを開催することとしました。

メガフロートは食糧不足や人口の増加、エネルギー枯渇など、地球全体の人々が抱える諸問題に対して幾多の解決の道を提供できます。また今日の技術の傾向からすれば、メガフロートは環境的自立性と自律性を獲得し、周辺の地域(海域)と多面的に協力し合う施設になるでしょう。このような技術のありかたは、陸地で展開されている既存の文明に対して新たな発展の指針を与えます。さらに、メガフロートの上で展開される社会活動は、領土争奪の歴史から自由になった新しい地域モデルを提供し、新たな国家感、世界観を考える機会を与えます。そしてこのような志向の延長には、宇宙での居住も垣間見えます。

今日我々は、迫りくる環境問題の脅威を感じながら、100 年に一度と言われる世界規模の経済危機の唯中にあります。

しかしここ半世紀に亘る環境への危機感は、地球と生命に関する人類の知見を急速に深めると共に、技術への慎重な態度を授けました。また、未曾有の経済危機は、我々に目先の動向にとらわれない大きな歩みを促しているようにも見えます。メガフロートは、技術的には既に実用化の段階にありますが、このシンポジウムを機会に、我々の生活を支える基盤として総合的に検討すると共に、人類の未来を展望したいと考えています。

2009 年 2 月24 日
メガ-フロート-アイランド シンポジウム
実行委員会